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【14年閉ざされた防波堤が開く】釣り人のマナー問題で閉鎖された「松崎新港」が、デジタルと地域の力で“誰もが笑顔になる釣り場”に生まれ変わるまで

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「なまこ壁」の美しい蔵造りの街並みが残り、那賀川の桜並木や棚田など豊かな自然と歴史が息づく町、静岡県松崎町。この風情ある港町にある「松崎新港」の先端部は、かつて多くの釣り人を魅了した絶好のポイントであった。しかし、ある時期を境に、その防波堤は堅く閉ざされることとなる。

それから14年。2026年9月、この“幻の防波堤”が「地域と釣り人が共存する夢の舞台」として本格始動を果たそうとしている。マナー悪化による閉鎖という全国の港湾が抱える社会課題に、松崎町はどう立ち向かったのか。その軌跡を追う。

松崎町の情緒あふれる「なまこ壁」

マナー悪化による立ち入り禁止。全国の港で相次ぐ「釣り場消失」の危機

2010年に供用が開始された松崎新港。駿河湾に突き出た防波堤付近は豊かな漁場として知られ、一時は多くの釣り人で賑わいを見せた。

その裏で、無断侵入をはじめとするマナーの悪化や、それに伴う事故リスクが深刻化。安全確保のため、県(港湾管理者)によって侵入防止柵が設置され、港は14年もの間「立ち入り禁止」となってしまった。

松崎町は静岡県内で最も人口が少ない町。役場の人員不足もあり管理が難しく、長年立ち入り禁止のままとなってしまったのだ。

実は、このような「釣り場の閉鎖」は松崎町だけの問題ではない。全国各地の漁港や防波堤で同様の問題が頻発しており、釣り文化の縮小や、港町と釣り人の断絶が深刻な社会課題となっている。

14年の封印を解くチャレンジ。アプリ活用、厳格なルール、そして「食」を絡めた町おこしへ

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「このまま貴重な観光資源を眠らせておいていいのだろうか——」

事態が動き出したのは2025年度。松崎町観光協会を中心に、行政府、伊豆漁業協同組合、警察、海上保安部などがタッグを組み、「松崎新港海釣り施設連絡協議会」の設立に向けた実証実験を開始した。

長年閉ざされていた港を開放するにあたり、導入されたのが、海業アプリ「UMIGO」による事前予約制、釣り場人数の適正化、そしてルールの周知徹底だった。

  • 人数の適正化:定員を50名に絞ることで、混雑によるストレスやトラブルを防止。
  • マナーと安全の周知:ライフジャケットの着用義務やキャスティング時の安全確認、リリースサイズ(カサゴ類は20cm以上・2尾まで等)や持ち帰り禁止魚種といった厳格なルールの徹底。

さらに、単なる「釣り場の開放」にとどまらず、地域の事業者と連携した「釣り×地域経済」の仕掛けを施した。

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地元の名店「麺屋 井むら」監修による、桜葉生産量日本一を誇る松崎町の桜葉と地魚を炊き込んだ「桜葉と鯛の炊き込みむすび」や、

温かい「地魚のあら汁」が味わえる「極旨堤防飯 Mk.Ⅱ」。

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そして、イトヨリなどの上質な魚肉を石臼で練り上げた「さつまあげ はやま」のさつま揚げに、自身で大漁祈願の焼印を押して味わう体験型メニューも提供された。

また、参加費の一部を「松崎町の木材を使った産卵床の設置」など「海の生き物を増やす活動」に還元する仕組みも導入。釣れば釣るほど海が豊かになる循環を目指したのだ。

安全面での配慮について、松崎町観光協会の依田貴文さんはこう語る。

「松崎新港の開放にあたって、警察に、消防、海上保安庁、『UMIGO』、役場、観光協会で協議をして、どうやったら安全にできるかっていう話し合いを設けたんです。ライフジャケットは必ず着用、中学生以上立ち入りOK(小学生以下は立ち入り禁止)、漁協とも連携をして、もし万が一落下した時に船で迅速に救助に行けるようにするなどを検討しました。何回も話し合いを通じ、他県の事例も参考にし、協議して決めました。お客様に対しては、『UMIGO』のアプリの中にルールを読む欄が設けられていて、当然皆様もそこを確認していただいて、安全面の確保をしながら実施ができるような形でお応えいただいております」

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松崎町の桜(松崎町は桜葉生産量日本一)、地魚の鯛、伊豆の山葵。堤防の上で味わうからこそ美味しい地域食材を用いています。

14年ぶりの開放で生まれた「トラブルゼロ」と「笑顔の連鎖」

大盛況だった昨年度の「松崎新港釣り利用トライアル」

実証実験として開催された「松崎新港 釣り利用トライアル」は、これまでの懸念を大きく覆す結果となった。

高台の釣り場へはスタッフの介助のもと梯子を使って昇降する本格的な環境ながら、事前予約制が円滑に機能したことでトラブルはゼロ。広々とした堤防でストレスフリーに釣り糸を垂らす参加者からは、感嘆の声が上がった。

実証実験に参加した釣り人の様子は、定員が50名に限定されていたため、隣の人と余裕をもって会話を楽しみながら釣りができたそうだ。早朝の澄んだ空気のなかで食べたあつあつのあら汁と、自分で焼印を押したさつま揚げの味は格別。ルールが明確だからこそ、みんながマナーを守って気持ちよく過ごすことができたという。

はしごを使って昇降する

さらに、早朝の釣りを終えた人々が「さくら葉餅」を求めて老舗和菓子店「梅月園」に立ち寄ったり、「伊豆まつざき荘」へ宿泊したりと、町全体の観光や地域経済へも大きな波及効果が生まれた。

持続可能な釣り場運営のモデルケースとして手応えを得た協議会は、いよいよ2026年9月12日(土)・13日(日)、正式本格始動イベント「海釣りGO 松崎新港 釣り三昧」の開催へと踏み出したのである。

釣り人と地域が手を取り合う「持続可能な海」の未来へ

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9月に開催された「釣り三昧」イベントは、秋のベストシーズンとしては実に15年ぶりの釣り場開放となった。

しかし、松崎町の挑戦はここで終わりではない。

漁期や冬場の強い西風の影響を考慮し、年内の利用は今回で一度終了するが、2027年の暖かくなる時期からは「定期開催」へと移行していく予定だ。

【松崎町観光協会 依田貴文さんの声】

「各地の釣り場の問題でいうと、つい最近沼津の港が閉鎖されたばかりで、釣り人と各地域の目線合わせというのはすごく難しい課題だなと思っているんです。一番海を資源としているのは漁師さんたちなので……。
これから有料の釣り場として開放することによって、観光資源としてもそうですし、海洋資源としての側面も出していきたいと考えています。売上の一部の中から産卵床というものを松崎町内に点在させることによって、釣りで楽しむだけで資源を消費するのではなく、釣りを楽しんでいただくことによって、さらに海洋資源の充実も図っていく。
自然にもいいし、観光にもいいし、町にもいいし、釣り人も楽しめる。そういうサイクルでぐるぐる回せるような企画になればいいのかなと思っています。そういう意味では、釣り人と地域経済、全てがWin-Win-Winになるような関係性で回していけたらいいなと考えています」

14年間閉ざされていた扉の向こうには、釣り人と地域住民が共に笑顔で海を眺める、新しい未来が広がっている。

松崎町観光協会:https://izumatsuzakinet.com
UMIGO:https://umigo.co.jp/matsuzaki-new-port

(白井恵理子)

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